政府は17日、社会保障と税の一体改革大綱を閣議決定しました。 2015年10月までに消費税率を10%に引き上げることが柱ですが、ここに看過できない問題が潜んでいます。 民主党が09年の衆院選マニフェストで掲げた「最低保障年金」制度です。
最低保障年金は、国民年金について保険料の納付制度を止め、消費税を財源として、中高所得層を除く全ての国民に、 月額7万円給付を保障すると言う制度です。 当時民主党の候補者が「これで年金未納も無年金もなくなる」と宣伝し、 政権交代の原動力にもなりました。
しかし今回の一体改革大綱に、最低保障年金の創設は盛り込まれていません。制度を完全実施するには、 その為だけに消費税率を7.1%引き上げないと実現出来ないからで、今回の引き上げと併せると17.1%になってしまいます。 民主党幹部は「17.1%が必要になるのは63年後。それまでは既存の年金制度と併用するのだから、今は盛り込む必要がない」と 屁理屈を言っています。しかし、先の衆院選で、有権者の皆さんは政権交代後ただちに無年金者がいなくなると信じたはずです。 「63年後の制度」などという説明はあったでしょうか。
さらに民主党は昨春、この制度創設に伴う消費税率を密かに試算しておきながら、公表を控え隠してしまいました。 高税率に引き上げれば国民の批判が高まり、今回の10%引き上げすらダメになると恐れたのでしょう。
そもそも、最低保障年金制度は矛盾だらけです。
民主党はようやく今月10日、制度の試算を公表しました。 試算は4パターンに分かれていますが、マニフェストに近い案でみてみると、生涯平均年収が260万円までの人に 満額の最低保障年金7万円を支給。それ以上の年収の人は徐々に減額し、690万円で支給を打ち切ります。 平均年収が約420万円以上の人は、厚生・共済年金を含めた現行水準より、給付額が下回ることが分かりました。
試算では、高齢者の4分の3が最低保障年金を受け取るとされました。 当然費用も巨額になり、制度を完全実施する2075年には、年61兆3000億円が必要となります。 現在の国税収入の約1.5倍にあたる額です。
私は、現役世代の保険料が高齢者の給付を支える今の制度が完璧とは言いません。 これまで4人の現役で1人のお年寄りを支えてきたものが、少子高齢化の影響でごく近い将来に、 2人以下で支えなくてはならなくなるからです。 高齢化は過去に想像した以上のスピードで進むため、昔の制度設計を見直す必要もあります。
しかし、民主党の最低保障年金制度は明らかに無理があります。 これをうやむやにしたまま中途半端な増税と社会保障改革を提案しても、何の意味があるでしょうか。
民主党は、早く与野党協議に入るよう求めていますが、私達自民党はこうした問題点を国会の場で堂々と議論して参ります。 こんな大事な問題を与野党協議と言って、密室談合で決めてしまうような事は絶対してはなりません。 |