今の永田町は、言いようのない虚無感に包まれています。政治家にとって大切なのは、言葉の重みと信頼、国民の皆様と心を通い合わせられる徳。菅総理はそのすべてを持ち合わせていませんでした。
自民党は1日、衆院に菅内閣不信任決議案を提出しましたが、大差で否決されました。賛成の決意を固めていた多くの民主党議員が、2日の採決直前に「菅直人首相が早期退陣を確約した」と判断し、一転反対に回ったからです。
不信任案には、自民党内にも「今は震災復興を最優先すべきだ」として、慎重な声もありましたが、私は提出して良かったと思っています。その一番の理由は、菅総理大臣のもとでは復旧や復興がさっぱり進まないからです。私たちがこれまでの経験にに基づいた『数100項目もの提言』も『役人などからの意見』も聞かず、ただいたずらに多くの組織を作り、自分の気に入った個人的な人選登用で、権限と責任が混乱するばかりです。 また、政府の発表がころころと変わり、国外からも不信感を招いております。そもそも、菅総理大臣の存在が「政治の空白を作っている」とさすがのマスコミからも批判されている状況です。
不信任案可決には、民主党から80人近くの造反者が必要でしたが、採決当日の朝には鳩山由紀夫前首相らが造反を明言し、可決しそうな勢いとなっていました。官僚や自治体を統括できず、遅れが目立つ東日本大震災の対応。判断ミスや情報隠蔽が重なった福島第1原発への対処など。「もはや菅首相の存在そのものが、復旧・復興の最大の障害だ」という 私たちの認識を、多くの民主党議員が共有していることが分かりました。
提出して良かったと思うもう1つの理由は、あまりにも無責任な菅首相の人間性が白日の下にさらされたことです。菅首相は採決前の代議士会で「震災対策・原発対応に一定のメドが付いたら若い世代に責任を引き継ぎたい」と述べました。続いて、菅首相と直前に会談した鳩山氏が「復興基本法案が成立し、第2次補正予算案編成のメドが付いたら身を捨てて頂くようお願いし、合意した」と明言。菅首相も反論しませんでした。永田町にいる人間なら、補正予算案編成のメドが6月末にも付くことは容易に想像出来、その時の退陣と思いました。
ところが菅首相は、採決を終えた夜の記者会見で、「そんな約束はしていない」。辞任時期の一例として「福島第一原発が冷温停止したら」とも言及しました。東京電力の工程表では、冷温停止のメドは来年1月です。
自らに突き付けられそうなレッドカードを人を騙して回避するというのは、日本の最高指導者のすることでしょうか。そこには政治家として、いや人間として大切な信義も徳もありません。
鳩山氏は3日、菅首相をペテン師呼ばわりしましたが、もはや後の祭りです。私は騙された民主党の代議士もいい加減だと思っています。
更に、その後の民主党の状況をみると、『お粗末』の一語に尽きます。辞めるのか辞めないのか、辞めさせるのか辞めさせないのか。後継は誰々が良いとか、まだ早いとか。訳がわかりません。私たち自民党に、「誰を党首にすると連立を組んでくれるのか?」等と他人事の様です。
大連立をどうするとか、補正予算をどうするとか言う前に一刻も早く菅総理が退陣を表明し、後継者が誰で、どんな考えを持ち、党内をどうまとめるかをはっきりしなければ物事は進みません。
20数年前の海部内閣時代、次代の総理大臣と言われた加藤紘一代議士にまだ県会議員であった私が「次に総理大臣を狙うんですか?」と問うた時、 加藤代議士は、「総理大臣は国の最高責任者であるから、党の幹事長や政調会長、また、大蔵大臣や外務大臣などの要職を経験し、どんな時にどんな事があっても対処できる自信があって、やるぞ!やるぞ!と気分を高められた時に出来るものだ。自分も小澤一郎もそれがないからまだ早い。」と仰られた事を今も鮮やかに思い出します。
残念ながら、今の民主党にはこうした政治家が無いように思えます。このような状況になってしまったのであれば、谷垣禎一総裁のもとで連立政権を組み、一日も早い復旧と復興、経済の再生に取り組むべきです。
|