英語教育を進めるため、大学入試にTOEFLなどの活用を。
「小学校から英会話を」文部科学省は、新しい指導要領のなかでこうした方針を打ち出しました。それにより、小学校5年生から週一回、英語の授業を行うことになりました。
私は小学校から英語を始めることに反対ではありません。頭脳が柔軟な子供のうちから英語に慣れ親しむことは語学の習熟に効果があると思うからです。数年前に視察したフィンランドでは、ディズニー作品など外国でつくられた子供向けテレビ番組は、日本のように吹き替えによる放送はせず、字幕による放送のみでした。そうして赤ちゃんの時から外国語の発音に慣れ親しんでいるために、小学校の英会話授業が大変スムーズに進められるということでした。
英語教育の目的は、「英語という言葉を使って他国の人と交流を図る」のが第一であり、外国に在っても臆せず話をし、異文化コミュニケーションを図ることにあります。それにはまず、相手の話を聴き、こちらの考えを話すことが大切です。
しかし、これまでの日本の教育では、中学・高校と6年間の授業を受けているにもかかわらず、ほとんどの人が英語を話せるようになりませんでした。その原因について私は「始める年齢」よりむしろ「授業の内容」そのものにあると考えています。授業の大半が、読み書き中心であることが問題なのです。最近になってようやく会話の授業を加えましたが、先生の多くは、聴くこと(リスニング)や話すこと(スピーキング)があまり得意ではありません。それは、大学の入試が文法を基に、読むこと(リーディング)や書くこと(ライティング)など、知識としての英語力を測ることで成り立っているからです。本来の順番は「聴き・話す」ことから「読み・書き」に至るはずなのに、今もって読み書きが主流の先生が多いのです。国際化に向けて、英語によるコミュニケーション能力の必要性はこれまでもずっと言われてきましたが、何故かまったく改善されない状態が続きました。
それならば、思いきって英語の大学入学試験をTOEFL(Test of English as a Foreign Language)など、実際にアメリカの大学に留学するときに用いられる検定方式にしたほうが、より実践的だと思うのですが、いかがでしょうか。これまでと同じやり方で入試を前提にしていたのでは、生徒たちの英語によるコミュニケーション能力が急に上がるとは思えません。それぞれの大学が独自の試験を行うのではなく、英語圏への留学を前提にしたテストを受験の条件にすれば中学・高校の授業内容は一気に変わっていくでしょう。
会話が得意でない大半の中学・高校、そして大学の英語の先生への配慮がはたらき、授業の内容が変わっていかないのであれば、システムの大もとから変えてみる。これからの日本に必要なのは「受験のための英語」や「学問のための英語」ではなく「実際に使える英語」を教えられる先生です。
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