教育再生と教育基本法の改正について
教育基本法案改正の中身がよく国民はわかっていません。きちんとその必要性やこれまでのどこが問題で、どう直すとどうなるのかはっきり示すことなく、採決してしまおうなんて、悲しすぎます。
それより、今問題のいじめ、自殺、ミーティングのやらせ、未履修の問題、贈収、わいろ、不正が蔓延する社会をどう変えていくかであり、今ある素晴らしい法律を生かせることもできないでいるのに、改正したからって出来るわけがありません。数で、物を言わせ、押し切る姿を子ども達に見せているのです。
愛国心も思いやりも言葉で教えればわかるのではなく、態度で、わたし達大人が教えなければならないのに、悲しすぎます。どうか、日本の歴史に汚点を残すようなことに歯止めを掛けてください。 遠藤さんの力を生かしてください。
との貴重なご意見をいただきましたが、私は以下のように受けとめました。
「いま学校の環境が、いじめや自殺の報道に代表されるように、おかしくなっているのに、教育に関わる大人たちの心ない対応や不正がどんどん明るみに出ている。そのような問題の原因追及や解決策について論じることが大切なときに、教育基本法改正案の強行採決を行うことには納得できない。数で押し切る大人の姿を見せることが、子どもたちのためになるのか」私自身、この度文部科学副大臣という重要な役割をお引受けし、最近特に増えているいじめや自殺などの問題について、たいへん深刻に受けとめています。教育の再生は、この国の最重要課題であり、いまの子どもたちを取りまく学校、家庭、社会全体の在り方を見直していかなくてはならないと、本気で考えています。
ただ、ここでご理解いただきたいのは、いじめや自殺はその端的な例ですが、教育の現場で起こっているさまざまな問題を解決していくために、特に義務教育を中心に「教員、学校、教育委員会を改革していく」という方向で政府内外で実際に議論がはじまっている、ということです。
それと重なってしまったので、どうしても同じ話題として捉えられがちですが、教育基本法の改正は、昭和22年、GHQの指導下にできた同法の、時代に合わなくなった部分を修正し、日本の未来を見据えた法律に変えていくことを目的に進められてきたものです。戦後何度も改正の議論が起こりましたが、2006年になって初めて改正案が国会に提出されました。法律ですからどうしても「言葉」の解釈や使い方が議論の中心になってきました。
たとえば「男女共学」については、当時は新しい発想でしたが、いまではごく当たり前のことですから、特別の条項にする必要はないのではないか。反対に、その当時はまだ重要視されていなかった「幼児教育」「大学教育」「私学教育」「学校と地域と家庭の連携」といった条項は盛り込む必要があるのでは・・・ いったような議論がなされてきました。
それらの中で、いま一番の争点になっているのは「国を愛する」「公の精神」「伝統を継承する」という3つだと思います。反対意見の中には、これらの言葉が戦前の一時期のナショナリズム思想を思い起こさせるというものがあります。しかし、私はそうは思いません。これほど情報が開かれた時代に、日本を取りまく国々とのバランスのうえに成り立っている国際社会の中で、日本が軍事大国になる必要も可能性も、まったくありません。
世界中どこへ行っても祖国を愛する気持ちは大切にされていますし、実際にワールドカップをはじめスポーツのシーンでは、皆ごくふつうに自分の国を応援しています。
家族を愛し、周りの人たちを愛することが広がって「国を愛する」ことに繋がっているのだと思います。また、「公の精神」も、現行の基本法が「個人の尊重」を中心に謳っているのに対し、自分のことばかりでなく周りの人々や、社会全体も大切にしようとする考え方です。さらに、「伝統の継承」についても大和、奈良の時代から現在へと続く「一千数百年の豊かな歴史や文化」に自信と誇りをもつ意味からも大切だと思います。ヨーロッパをはじめ世界の多くの国々は、自国の伝統に誇りを持ち、後世に伝えるよう努力しています。
先ほど「教育現場の問題」と「基本法改正の問題」が、重ねて捉えられていると申しましたが、基本法は「憲法に則って国の教育理念を宣言する法律」ですから、その新しい枠の中でさまざまな改革案が話し合われ、教育の現場へ浸透していくことにより、学校でのさまざまな問題を解決する出口を見いだせる可能性は高いと思います。
そうした意味では、最初に基本法をしっかりと見直さなくてはなりません。
衆議院本会議での採決は、数の理論で押し切ったのではなく、野党の皆さんが話し合いの場に出てこなかった・・・ いわば学校の学級会で自分の意見が通りそうもないときに、前向きな意見を言う代わりに欠席してしまった」という状況に近いと思います。
そのような大人たちの姿を、子どもたちに見せたくないと、私自身はもちろん考えていますし、これからも野党の皆さんに働きかけていくよう努力いたします。
(ただ、相手があることなので、なかなか思い描いたようには進められないのが現状です)
また、教育基本法改正案の内容につきましても、できる限り多くの国民の皆さんに正しくご理解いただけるよう、マスコミへの対応、広報誌、インターネット等を通じて周知徹底を図りたいと考えています。
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