ヨーロッパの義務教育の現状を視察に。
5月1日から8日までの日程でフランス、フィンランド、イギリスを訪れ、各国の義務教育の現状を視察するとともに、OECD(経済協力開発機構)の教育責任者と世界の教育事情について意見交換をしてきました。
今回参加したのは、最近の日本の子供たちの学力低下や体力の低下、また子供たちに関する事件の多発など、多くの課題を抱える義務教育の改革を検討するために作られた「自民党義務教育特別委員会(会長河村建夫前文科大臣、幹事長遠藤利明)」のメンバーと、塩谷立文科副大臣をはじめとした文科省の幹部等によって構成された合同視察団です。
今年1月に設置して以来、毎週一回開かれる特別委員会では、大学教授や教育長などの有識者、知事などの首長、また現場の校長などから意見を聞くとともに、小中学校の授業の視察などを通じて義務教育の実態を調査してきました。その一環として、今回の視察は海外の教育の現状を把握し、今後の参考とするために実施されました。
最初に訪問したフランスでは、すべての教員が国家公務員であり、2005年の教育改革で3つの目標を掲げ、国家戦略として必死に取り組んでいました。ただし、移民も多いせいか生徒たちの成績の差が大きく、全体のレベルアップに苦労しているようです。
2番目に訪れたフィンランドは、OECD各国の成績テストでトップの評価を得ている国です。教育費が無償であるとともに、幼児から大学生まで教育機関に何年在籍しても構わず、個人の学ぶスピードを重視しています。教員はほとんどが大学院の修士卒業者であり、研修生として学生の早い段階から学校現場に出て経験を積んでいます。
また、低学年のうちから実社会に活かせる授業が行われていることや、文字・活字を大切にするためテレビでの吹き替えを認めず、全て字幕スーパーにしていることには感心しました。
最後に訪れたイギリスでは、教育改革に全力を傾注していました。かつて義務教育を地方に委ねたことが『イギリス病』の原因だったとして、1988年に保守党のサッチャー首相が教育改革を断行し、後を継いだ労働党のブレア首相も「一に教育、二に教育、三に教育」と改革を続行。現在75%の義務教育費を国が支出し、国が基準造りと監視を行い、財源を保障するとともに、人事などの権限を学校の校長や市町村に委ねています。総選挙の真っ最中でしたが、勝利した労働党は2006年度からは義務教育費の100%国庫負担を公約にしていました。
今回のOECDの調査をした担当責任者との意見交換では、(1)国がはっきりとした教育目標を持っている (2)国が財源を保障している (3)現場への思い切った権限委譲をしている、といった教育政策を実行している国への評価が大変高かったといえます。
5月19日の義務教育特別委員会で当面の改革案をまとめましたが(中間取りまとめ)、今回の視察が大変役立ちました。特にイギリスの行ってきた教育改革を、日本の新しい改革の参考にしたいと考えています。(各国の教育事情の詳細は後報で)
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