三位一体の改革、義務教育国庫負担金制度について。
11月26日、小泉内閣の提唱する「三位一体の改革」について政府・与党が合意をいたしました。2005、06年度で約2兆8380億円の補助金を削減し、地方に移譲する税源は04年度分の6560億円も含め約2兆4160億円となりました。
今回の三位一体の改革とは、一に、国税を削減すると同時に国から地方への補助金を削減し、二に、替わって地方公共団体が国税減税分を増税して、これまで国の補助金に頼っていた事業を地方独自の考えで行うということ、三に、地方交付税を見直すということです。
これらの基本的な考え方は正しいと思います。しかし、いくつかの問題点も指摘できます。
その一つは、所得の多い層が多く住む東京のような大都市は税収が多くなり、事業の継続に余裕がでますが、所得の少ない、例えば我が山形県をはじめとする40道県は税収が減り、事業の継続が困難になってくることです。
二つ目は、地方6団体からの3兆円を越す補助金削減案についてで、「まず3兆円ありき」になってしまったため、これから支出の増える高齢者などへの補助金を国に預け、支出の減ってくる青少年への事業を地方で行なうとしたことなど、大きな議論もなく、全く数字合わせの結論になってしまったことです。
さらに、急いで作ったため、実質的には「知事会の要望」になってしまい、市町村の考えが正確には盛り込まれなかったことです。そのために、例えば、治水事業の概ねを地方に委ねるとしたのですが、台風による風水害の状況を見て、「やはりこうした事業は国の責任によって行なわれるべきである」という決議が、多くの県や市町村で行なわれたり、また「義務教育費国庫負担金制度が堅持されるように」と、圧倒的に多くの県や市町村の教育委員会委員や教育関係者が訴えているのです。
特に、義務教育費国庫負担金制度の地方移管については、私は反対の立場をとっています。憲法26条に「国民は等しく教育を受ける権利を持ち、また保護者は子供に教育を受けさせる義務を持つ」と書いてあります。これは、全国どこに住んでいても教育を等しく受ける権利があり、そのための義務教育は無料にするということです。
教育は、国政の最重要課題です。そのために世界各国は近年、教育に関する国の関与を大きく増加してきました。フランスや韓国などは国が100%責任を持ち、また1950年代から教育を地方に委ねてきたイギリスでは、イギリス病の原因がここにあると、1988年にサッチャーが教育改革を行い、後を引き継いだブレア首相によって現在は75%、2年後には100%を国が支出するという枠組みで動いています。この改革のスローガンが「教育は日本に学べ」なのです。
連邦制のアメリカでは、教育は基本的に州の行なう事業となっていますが、世界的な大競争時代を迎え、ブッシュ大統領になって義務教育費の10%、約4兆円を国が負担することになりました。
こうした世界の流れからみても、義務教育は、国が責任を持って行うべきものであると考えられます。
「義務教育費国庫負担金というのは学校の先生の給与であるから、人事権を持つ地方であってもかまわない」という意見がありますが、教育は人、つまり先生の質こそが最も重要なのです。こうした改革の下では、予算不足のため、臨時教員の採用等によって経費削減が行なわれる恐れもあります。そうしたマイナスの可能性も想定したうえで、私は国の責任によるべきであると主張しているのです。
もちろん、これまでの文部科学省の施策が、中央集権的すぎて画一化していること、制度ばかりが優先され、肝心の教員の質の向上が為されなかったことなど、問題を抱えていることは否定できません。子供の教育レベルと体力の低下や、学校に係る犯罪や事件の多発など、解決されなくてはならない問題も数多く存在します。
改めて、私は「教育は国の礎である」との信念の下、自民党文部科学部会長として教育改革に全力を挙げていく覚悟です。
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